腹部大動脈瘤について

腹部大動脈瘤は動脈が拡大する病態です。原因は動脈硬化により動脈壁が脆弱となり拡大を来す病態です。風船に例えると、風船は膨らんでいくと最後には破裂します。動脈瘤でも同様で、拡大すると最後には動脈の破裂を来します。破裂してからの手術成績は手術死亡率が30~50%と良いものではありません。従って、破裂する前の手術が必要となります。
通常の腹部大動脈瘤の手術は、開腹して膨らんだ大動脈周囲を人工血管に置換する手術。人工血管置換術が行われます。開腹術なので、腹部の創痛があり、開腹までやや時間がかかります。通常、手術後の入院期間は2週間から1ヶ月程度です。高齢者や、合併症が生じた場合はさらに入院期間の延長が必要となる場合も有ります。
腹部大動脈瘤ステント内挿術は、通常全身麻酔で行います。
両側の足の付け根(鼠径部)に5~8cmの切開を加え、大腿動脈を露出して、ここから、カテーテル(管)を挿入し、折り畳んで細くしたステントグラフトを血管内に挿入し、留置します。順調に行くと1時間以内程度で終わります。
ステントグラフトを内挿すると、血管造影で動脈瘤が見えなくなります。つまり、動脈瘤内に血液が流れない状態となります。それは、動脈瘤の内部に人工血管が入り、動脈瘤に圧がかからない状態となるので、破裂の危険性が無くなります。
そして、手術当日から、歩く事も出来ます。開腹術に比べて、浸襲の少ない、体に優しい手術と言えます。入院期間も4日から1週間程度です。
体に優しい手術なので、高齢者や心臓、呼吸器等に合併症を持つ患者さんには開腹術より危険性が低い手術と言えます。
ただし、新しい治療法なので長期の成績が十分ではないので、若く、特に合併症の無い方には、今のところステント治療はおすすめ出来ません。残念ながら開腹手術をお勧めいたします。
またステントグラフトは万能ではありません。動脈瘤の形状によってはステントグラフト治療が困難な場合も有る事をご承知下さい。